みなさま、こんにちは。北川です。
「午前十時の映画祭」なる、数か月にわたるロングランのシリーズ企画がありまして一都三県の各所映画館で、数多くの名画が期間を区切って再演されています。
先日、拙稿でイタリアの至宝「暗殺の森」ブルーレイリマスターを入手、自宅鑑賞したはなしをしましたが、リヴァイバル上映としてはイメージフォーラム以来なんと20年ぶりに劇場で見ました。ブルーレイより、SE音響がTOHOはよくないとの苦言がちらほら。
ただし、メインテーマの物悲しい響きをドルビーサラウンドで浴びると、この1970年製作ながら至高の撮影手法によるベルトルッチの美意識をひたすら堪能できた気がします。特にドミニク・サンダが森の中で逃げまどいながら惨殺される際のリアルなカメラワーク。これは後述します。
それと、ブルーレイをみたときと違うのはこの上映シリーズならではの、本作品へ賛辞をささげる町山智浩さん寸評が上映前後に各5分くらいさしこまれているところです。ちなみに、町山さんによればベルトルッチはゴダールへのアンビバレントな敬意を隠すことなく、各シーンにちりばめていると。映画の歴史とは、技術革新もさることながら過去作の換骨奪胎も名監督によってつづいてきたとおもうのです。
今回、あさ9時半から新宿TOHOで睡魔と必死に戦いながら見終わった名画は、2か月まえブルーレイでみていた記憶とちがっている部分がいくつかあるのに我ながら驚きました。とどのつまり、わたしの記憶力のあやふやさです(ファイナルカット編集はおなじ素材、音響のみ上映館によって違いが生じる。各館の再生イコライザーによる差異)以下いくつかのシーン毎レビューをします。
この映画のみどころは、愛憎の官能シーンがイタリア~パリへと舞台が移転していくなかで展開される。さらにイタリアファッショ台頭における登場人物たちが果たす役割とそのラストへの収斂のドラマです。正直もうしあげて、イタリアファッショに巻き込まれる登場人物たちの心情推移はあまりにも縁遠くわかりかねるわけですが、日本でのファシズム浸透のようすを過去文献などから知るに、近い様子が繰り広げられたんだなと想像します。まあ激高してなにか叫ぶさまは、戦メリなど軍国主義映画にあるとおりです。
官能シーンはベルトルッチおてのものであるのは、ラストタンゴインパりでも有名ですが、先生の妻・ドミニクサンダのみならず、ステファニア・サンドレッリ*が新婚クレリチの妻を演じる、その若さと美貌、とくに目線のもつ無言で何かしらうったえる様はいまでも通じる魅力的な古典的女性らしさとおもいます。すばらしい演出
*1969年のサンドレッリ
後半、暗殺の前にパリにて中華レストランで主要4人が食事をする重要なシーンがあります。撮影カメラのさまざまなアングル、バックヤードで見張りが会話する様、これら店内の演出は、密かにコッポラがゴッドファーザーのマイケルがチミーノと警官にむかって発砲するシーンの下敷きにしたのかな、、とテーブルに座り食事をしながら各人感情を交錯させる様子がやや似てるかのように思います。
個人的に、ラストの元運転手を詰問するクレリチのシーンは、セットが似てるとおもっている後年のスラムドッグミリオネア 盲目少年乞食の歌唱シーンを想起させ、あまり後味が良くありません。あくまで個人的に、スラムドッグのテーマやインドカーストの惨たらしい現実が耐えられなくイヤなせいです。
そして
やはり、すばらしい不朽の名シーン。先生とサンダへ次々と刺客たちが襲い掛かる惨劇のシーケンスは今回も息を飲みました。何度反芻してもこの10分は永遠に記憶から消えはしない。
そのむかしカメラは歩き/走りながら回すと、手振れがそのまま映像に反映されました。あたりまえですが。ステディカムが出現するまで、動きながら撮影するには、レールをひいて台車を轍にはめそこをスムーズに横移動して画面内がブレないように細心の注意を払っていました。逆にこの惨劇の撮影では、ストップモーションもまぜながら、必死に雪中山林を逃走する人物の息遣いもきちんと録音し(アフレコ)、死ぬ寸前まで追いつめられる人間のリアルな焦燥がこのうえなく如実に再現されています。のちのプライベートライアンで数多ある生死の狭間シーンに匹敵するくらい、1970年にしてあまりにも現実事象に近寄せた最高の撮影技術・演出だとおもいます。ぜひとも、ブルーレイでその事実をたしかめてほしい。5000円で御釣りが来ますから。
前半のファッショに纏わる様式美もモード的な衣装もあり、銘作映画の美しい撮影の伝説のひとつではあります。とはいえメインイシューである「暗殺の森」シーンの非情さ、無情さは、ラスト車中で車外窓辺に縋りつくサンダをみつめるクレリチが眉一つ動かさず、車のよこで崩れ落ち息絶えるのを見届けるところでピークアウトします。この時のドミニク・サンダが自身にふりかかった非情の死の寸前に叫ぶ金切声は、見た者聞いた者の脳裏からそうそう消えはしません。
『映画が面白いのは、自分の人生は一回しかないけれど、映画をみるとそれが何回でも味わえる』
年500本映画をみる知人から聞いた金言です。故淀川長治さんではありません笑
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