みなさま、こんにちは。北川です。
唐突ですが音楽家で、T字路ズという(中年)男女のDUOをご存じでしょうか? といっても歌うのは女性だけ、男性はベースを弾くのみ。つい最近はNHKあさいちに出演し、スタジオで演奏歌唱を披露したようです。東名阪ツアーもおわったばかり、あさからお茶の間の度肝をぬいたとか
このDUOでボーカル・ギターと歌詞作成を担う伊東妙子さんが神奈川県横須賀市出身と最近知りました、県立横須賀高OGだそう。御年40代後半ですね。なんというか、歌声とエムシーの喋り声のキーがずいぶん違う不思議な女性なのですがその歌唱は一度みたならば、二度とわすれることはできないでしょう。みればわかります...
エゴラッピンという男女二人組が15年前くらいか大阪からあらわれ、現代のブルースをかなでてくれ話題になりましたが、それくらいのインパクトがあります。といっても結成13年円熟期をむかえたといえましょう
彼女の魅力をいくつかのポイントにまとめるなら、以下に絞られるかなとおもいます。
1 意外性
2 極限の感情表現
3 多彩なカバー曲のセンス
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意外なのは、とても体が小さい女性であることがステージのマイクの高さでわかるのですが、その全身をふるわせギターを弾きながら絞り出す歌声が「とてつもなく大きい」のでびっくりします。どこからこんな大声が出せるのか肺活量との相関もなぞ。エムシーのときはゆっくり丁寧にしゃべりますので、和田アキ子さんのうえをいくドスのきいた「こぶし」はとても想像つきません。
いつもかついでくるエピフォンギターはヘリテージのようにディストーションがなく、ディレイ・アンプなしでもよいくらい生音にしていつもステージのセットを組みます。ついでにいうならベースの男性 篠田さんも音量を絞って演奏をしますので、とにかくボーカルだけで勝負のような曲がおおい。
彼女が13年まえまでつづけていた3人組バンドではもっと、ノイジーでピッチのはやい曲が多かったのを、ドラムレスでゆっくりした曲で歌うとどうなるか試しつつ二人で新曲を貯めてきたそうです。ドラムなしのメリットはせまい喫茶店でもどこでも演奏できることだそう。それぞれバンドを10年以上やってきた二人が歌唱を際立たせるのに意外な効果を発見した編成です。
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これはぜひ生演奏をみて判断してほしいところなのですが、ユーチューブチャンネルの動画をみてもすぐわかります。伊東さんのお顔はご覧の通り寄席芸人といっても通じる愛嬌しかないところを、低音でどすのきいた叫喚は一曲一曲がいわゆる魂こがすような絞り出されるパフォーマンスにみえます。その極限の情感がこもった顔。目の前のひとの心を鷲掴みにくる歌声です。
サラヴォーン、ビリーホリディ、淡谷のり子の初期もこんなだったのか!?とおもわせる、全身全霊ありったけの演奏・歌唱スタイルはどちらかといえばブルース的アプローチなのですが、「女性」のブルース/ロック歌手というとジャニスジョプリン、ボニーレイット、ココテイラーくらいしかなかなか著名人はおりませんので、正直比較はできないとおもいます。それと憂歌団、上田正樹的な「日本語のじょうずな使い方」が巧みで、歌詞が曲にはまるまでに相当時間をかけ吟味作成してるのがよくわかります。
「泪橋」というかれらのテーマソングともいえる代表的楽曲があります。
おのれの半生の味がした、そんな気さえする人生の酸いも甘いも噛みしめるときの感情を表現しているのですが、男性でなく女性がうたうとなおしんみりしてしまう。しかしよく喉がもつものだという感心とともに。
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エディットピアフ、中島みゆき、RCサクセション、森進一などなど彼らはステージで先人たちの有名曲を独特なアレンジでカバーします。カバー曲だけのアルバムもある。なんというか伊東さんが歌い出すと不思議と彼女がつくった曲にきこえるくらい、比類のないボーカルなのです。
RCやピーズは彼女が元々昔からすきな、Tjirosのまえのバンドでやっていた曲調に似たオリジナル曲。すなわち=わかさ、衝動でバンドをつづけてきた伊東さんの「純粋さ」の好みがよくあらわれているとおもいます。といっても、彼女は昨年まで25年間会社員を正業とするかたわらバンドを続けてきたそうで、現実に必要なお金も自分できちんと稼いでいたところに所謂バンドマンらしくない律義さ、うたと同様真剣に自分のできるしあわせを精一杯追いかけてきた人なのだなあとおもうのです。そんな女性が人生の酸いも甘いも歌い上げるとしかいいようがない。
ロック、ポピュラーミュージックの殆どは、音源録音だけでなくライブ生演奏をすることでその魅力を最大限につたえることができるものとおもいます。伊東さんの表情をみていると、力の限りとはこのことかとおもうと同時に、そこまでしなくても十分よさはつたわってます...とでもいいたくなる。オリジナル曲もそうですが、曲をつくった音楽家への敬意に満ち溢れたカバー曲しぐさも本当に人柄がよく伝わってくるなとおもいます。
ほんとうに不思議なのが、歌う濁声とエムシーの普通の喋りのギャップで、どこまでが芸事としての幻惑なのか気になりますね。偶に聴くと生きる姿勢がただされる音楽と思っております。
毎々拙文のご精読をありがとうございました。
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