みなさま、こんにちは。 梅雨はあけましたが、今年はあまり降雨量がありませんでしたね 野菜が高騰しないとよいのですが。
橋口亮輔監督 9年ぶりの劇場公開作をみてきました。
わたしはいまだに ネトフリの新作を待つよりも映画館でロードショーをみるほうが好きです。トイレへ自由にいけない大問題にも関わらず!松竹の株買っとこうとすら。極力神奈川県内で見る派
橋口さんは是枝裕和さん、塚本晋也さん、岩井俊二さんらとほぼ同世代。ジェンダー特性に纏わる脚本がおおい映画監督です。今回はオリジナルではなく元々脚本があり、キャスティングから橋口さんが企画していったものだそう。
本編は、三姉妹と母の温泉旅行における旅館内での愛憎劇です。
結論から申しますと、家族ドラマでいうと大昔の山田洋次さんやTBS久世光彦さんの演出がこのみゆえ、台詞のありきたりさ、冗長な多さがなじめず個人的にはいまいちでした。三姉妹の演技は普通におもうのですが、キャラ設定がありきたりに感じ、あまり楽しめなかったのです。名編集者・鳥嶋和彦さんのいう「ストーリーなどどうでもよい。主人公の際立つ個性こそが漫画を面白くさせる」という名言のとおりかもなとついおもってしまいました。
つくづくおのれの天の邪鬼を感じるひとときです。
先日、知人とはなしていておもったのですが、いわゆるマスコミ(広告、出版、媒体)で若くして仕事をしだすと刺激あふれる生活に慣れっことなりまして、地味で饒舌に非ず・修辞がすくない対象/事象に物足りなくなっていきます。おもしろいものをひたすら渇望していたわたしです。とはいえ。
むかしある20代の女性編集者は自宅は寝に帰るだけ、冷蔵庫にはポカリと水しかはいっていない。贅をつくしたパーティライフをすごしてから結婚出産を経てワーママとなり、一転料理本をだすまでご自宅で調理と撮影に本領発揮されました。
なにを言いたいかというと、歳をとると「気に入ってるしつらえの自宅」で自炊がいちばんです。家族も増えると。
そんなワーママたちと予備軍のひそかな武勇伝が旧Twitterには溢れかえっていて退屈しないのですが、この映画にはそんな派手さが微塵もないのです。女性がたくましく自由に自分の人生を切り拓くエピソードは近年増えており、本作におけるテーマに少々ギャップをかんじてしまいました。九州のごく平凡な家庭のおはなしだからなのか!? なんとも事件のないささやかな人生をおくる超コンサバな親子たちの私小説にもおもえます。
とてもよくある、過去いろんな人から耳にした人生の来し方に感じられ新鮮味がなかったのですが、そもそも男性のわたしが3人の女性同士の会話に共感することなど無理なのかもしれません。
そもそも、映画にする題材としてなにかのイシュー提起があったほうがいいとおもっているのはわたしだけで、ありふれた日常を切り取った、日本の地方都市での出来事を映画にしたらば、わたしの個人的ニーズとはちがったということかもしれません。
劇中で三女かシングルファーザーと結婚するつもりだと判明した時点で、連れ子のいる家へ初婚で嫁ぐなんぞありえへん!と長姉がすかさずいうあたり40年前の常識のようにもかんじました。現実にも地方にいくとこのような昭和的差別(世間体)があたりまえなのでしょうか...?? だとすれば、地方の20代男女は窮屈な地元から離れたくなるのも仕方ありません。
とこのように劇中の姉妹同士とまた母との会話や過去の関係性をめぐってひたすら紛糾がつづく物語なのですが、ラストへむかう収斂でそうはいっても家族は分かちがたい、愛情でむすばれた血縁。かけがえのない人間関係と感じさせる展開になるのです。喧嘩で腹蔵なく罵詈雑言をいいあってから、云い過ぎたわごめんね。と丸く収まるような後味ですね。
最後は平和にもっていくプロットのために、姉妹がみな疎み憎む母親が最後まで画面にでてこない(役者の演技は存在せず、姉妹の会話中にだけ母の描写がなされる)絶妙な演出がなされています。後ろ姿すら画面上にはない。もし母親のすがたかたちが映ると、その存在へ映像をみるものには負の感情が集中してしまったとおもうのです。それを回避したのはすばらしいアイディア。
このような、画面に現れない人物について(もしくは故人など)他者がさんざん会話で説明をつづける演出はとても好みです。
それとやはり、役者としては素人である青山フォール勝ちさん(ネルソンズ)の演技が、三姉妹を相手に超アウェイなシチュエーションでのうまーく立ち合いをつづけるところに、同じ男性としてはとても自然で安心できる上出来のものであったなとおもいます。なかなか勇気のいる場面をこなした。
やはり男性がみるのと女性がみるのとでは視座感想が変わってしまうのでしょうね。
ねたばれのように詳述してしまいまして恐縮ですが、ホームドラマでしみじみしたい向きにはおすすめの佳作です。夏休みにご鑑賞をどうぞ...
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