みなさま、こんにちは。北川です。 暑くてこまりますね。あるくだけで汗がとまりません。諦めモードです。和装のようにゆっくりあるくと体温があがりにくいライフハックを会得しました。
週末は極力家から出ないで過ごすようにしていますが、パリオリンピックも時差の関係で決勝種目は27時など明け方のため、いまだまともにみたことがありません。たしかに1998年フランスWC決勝も28時からでしたね
先輩のK原さんいわく「プールにいくしか、涼しくなる方法はあらしまへんえ」
水浴び、行水の効能を主張しておられました。子どもが海か川かプールにつかるのは自然の摂理なのです。子どもだけでなく人類というか動物も。
わたしもたまには市営プールへいくのですが、夏休み中のこどもが朝から増員しており6月の4倍の人口密度になっています。とても快適とはほどとおいので、自宅でアマプラや円盤にすがって涼をとります。
怪談よろしく、いまだ夏に繰り返しみかえす円盤があります、恐怖映画です。この未曾有の暑い夏をのりきるのに、ご家庭で必須の1本をご紹介します。大変有名なれど、もちろん未見のかただけでなく、ご存じあるかたも今一度ぜひ。実家ではもう見飽きた、気味が悪いと嫌がられましたが、現在までに通算25回みてます。あほですね
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■スタンリー・キューブリック監督  「ザ・シャイニング」 ※(1980年米ワーナー配給)
 ※「超能力」が和訳
 主演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュバル、スキャットマン・クローザース ほか
折しも先月デュバルがこの世を去りました。本作でのセクシーな表情と声はわすれられないのですが、晩年の荒んだ暮らしぶりは聞くに堪えません。合掌。 以下にモダンホラー最高傑作のみどころを、キューブリックのつねにチャレンジングなオリジナリティを好むわたしなりに紐解きます。
おおきく3点ございます。以下ねたばれを含みますが、読んでから視聴してもまったく問題ありません。
1 ステディカムを駆使した画期的な室内撮影
2 キャビンフィーバーとアルコール依存
3 極限状態で生死をわける判断とその背景
ステディカムとは、1970年代後半世に出た「自動で手ブレ補正する」カメラです。ハンディカムとしてコンシューマ製品になるまでにはまだ時間がかかります。当時はプロ撮影用の技術開発でした。
本作では主演の未就学児がちいさな足漕ぎカート(三輪車)で長期逗留中のホテル内をはしりまわるカットが多用されます。その子ども目線をステディカムによって長時間にわたりリアルに表現/再現したのが奏功しました。
それまで車両等のアングルで被写体を追いカメラを長時間うごかすには(下にレールでも敷かない限り)手ブレの生じることは不可避でした。それがなくなり、じつに見易い画角になったことは当時とても話題になりました。これは三輪車のスピードだからなせる技なのでプロットの妙です。ちゃんと絨毯のうえを走るカートの車輪の音もきちんと被せてあります。このあたりの巧さはキューブリックが撮影後何百時間でもみずから編集を延々つづける結果、独自のリアルティが毎回担保されるとおもっています。撮影時のカメラアングルもいつも自分でスコープ片手にいくつも試してからテストして本番です。
このカートによるホテル内探検のカットが、じつは後半惨事の引き金でもあり編集の結果ファイナルカットでも随分と時間を費やされます。カート移動時くりかえし使われる恐怖の序曲(SE)が絶妙です。台詞はありませんから。ジョンオルコットの撮影は採光の具合が毎度自然光のようでとてもきれいにみえます。リアル。
そしてホテル内を劇中ぐるぐる走り回るあいだに超常現象がつぎつぎと起こります。シャイニングを持つ主人公の坊やだけでなく、その両親であるニコルソンとデュバルも目の当たりにし、次第にニコルソンの狂気に拍車がかかりはじめます。
この展開のじわりじわりと進む室内セット各シーンがキューブリックならではのストップモーション撮影により「ほんとうに背筋が凍りつく」恐怖を味わえるのです。願わくば毎年ガーデンシネマで夏だけ再上映してほしい。
2
キャビンフィーバーとは、容易に脱出できない空間で人間が発狂するメカニズムのことをいいます。しかもニコルソンは劇中に過去アル中のトラブルから断酒した設定になっています。
そもそも映画の最初に、冬営業できない山中のホテルの管理人を冬が終わるまで引受ける。逗留中は小説を書き上げるのが仕事さ、と意気込んで親子3人は山中にむかいます。容易に脱出できないうえに、過去にもキャビンフィーバーで冬の管理人が家族を惨殺してる事故物件に3ヶ月軟禁です。仕事とはいえ。閉所ではなく広大なホテル内に3名しか人間はいないはずが、次々に他人の姿がみえてきたならば
おそろしさのあまり、発狂してもおかしくありません。簡単に脱出できないのですから
それと、小説を書く/創作活動を数ヶ月、自己環境内外からのインプットなしに続けることは、インターネットが存在する現代でもおそらく不可能であるとおもいます。もしこの物語で仮に小説を完成させていたとしても、凡庸な作品しか生まれないはず。見たこともない天才でもなければ、人間の想像力とは限りがあります。作品として品質の高いものを求めるならば土台無理がある環境。
そんな無謀に挑みまったく仕事にならないのを、真剣にジレンマととらえる時点で十分狂気をはらむのですが、結局「超常現象」「ホテルの亡霊たち」に正気を保てず終焉にむかいます。そして朦朧としながらアルコールをひとたび口にしたならば...
そもそも逗留の目的に無理があった時点でトラブル必至だったろうと、一般的に作家の孤独と生産能力をおもうと、つい冷静に浅はかな理想の破綻をのろいたくなります。発狂に至るまえニコルソンのエゴと家族への愛情の交錯がみものです。
劇中の坊やが自室の鏡台に「REDRUM」と逆さ字を書いた瞬間から、一気に凄惨な修羅場は加速します。最高の演出。ニコルソンが助けにやってきたスキャットマン(ハーラン料理長)を斧で一撃で殺すところも見ものです。効果音の使い方、台詞がないままなにがおこるかわからない物語りのゆっくりした進行に毎シーン息をのみます。
最近感じたのは、わたしはもうどのカットがどんな順番で現れるか知っているわけですが、この映画をまったくはじめて観るひとからしたら「恐怖」の連続で気絶するくらいのインパクトあるよな、とおもうのです。慣れていて何度みていても、おどろきます。
ハーランさん以外も殺されそうになりながら、デュバルと坊や(ダニー)は逃げ続けるのでありまして、ダニーが雪上の足跡を消してから隠れるところがほんとうにおどろきます。5歳くらいの子どもが斧をふりかざす狂人から、死に物狂いで逃がれようとしてるときにそんな冷静なトリックをやってのけるのは信じられません。結局それが決勝点で、母子は脱出できるわけですから。
どんな困難なとき、錯乱しそうでも正気を保つ、一瞬立ち止まる冷静さをうしなったらいかん!という教えをいまも忘れずにいます。死んでしまえばすべておしまいですからね。ひたすら家族内での惨劇がつづくのは、この物語りがいわゆる勧善懲悪、悪と善玉の爭いなんかではなく、もはや泣くしかない狂ってしまったお父さんから母子が命からがら逃げだす。なんとも一言でいえない後味のわるさがあり、単なる想像力の産物だけでない「モダンホラー」といえるのかとおもいます。
実にリアルな映画だとおもいます。毎分息をのむ。亡霊が次々あらわれても、画面のこちらで見てるわたしもニコルソンとおなじくらい茫然としてしまう。それくらいリアルです。音効も最高。撮影監督オルコット優勝
以上端的かつ断片的でしのびないのですが、なぜ25回みても飽きないかの個人的な申し開きをお読みくださり、感謝申しあげます。すこしでもこの映画の理解の助けとなりましたら筆者も光栄です。
そして、視聴によりみなさまの体温が僅かでも下がることをお祈りします。
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