代表の佐藤です
先週末、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催されたフォーミュラ・リージョナルレースにて、18歳という若いドライバーが死亡する事故が発生し、自動車レース界隈の大手メディア、SNS、F1ドライバーなどでも論争が繰り広げられています。
フォーミュラカーというタイヤがフェンダーに覆われていないオープンホイールスタイルの車両で行われるレースカテゴリがあり、そのトップカテゴリがFormula 1いわゆるF1で、その下にF2、F3、F4というピラミッド構造になっています。
F1、F2、F3は世界選手権でFIA直轄開催となっており、F1、F2ともなればプロフェッショナルレース。F3はプロ・セミプロ混在のレースです。
F4以下は各国・各地域ごとのFIA所属自動車連盟(例えば日本ならJAF)が開催するノービスレースといった形でしょうか。
フォーミュラ・リージョナルというのはこのF3とF4の間に位置して、ヨーロッパローカルのレースという位置づけになっています。
元々はヨーロッパF3というものがあり、それをFIAによってFIA F3に引き上げられることで各国自動車連盟が開催するF3レースが無くなってしまって困るという事からリージョナルが発足しました。
元はF3から袂を分かちましたが、内容としてはF4マシンのアップグレード版といった形で、車両の価格上限が規制されています。
ギリギリまでコストカットしている車両という事です。
実は2019年にも、このスパ・フランコルシャン・サーキットの、しかもF2というかなり上位のプロフェッショナルレースにて死亡事故が発生しています。
このコースのメインストレートから壁のような登り坂を全開に駆け上がりながら超高速で右に駆け抜けるオー・ルージュというカーブが有名です。
大変チャレンジングで、このカーブを全開でクリアすることがプロフェッショナルの第一歩とも言われるほど。
そしてやはりそのオー・ルージュとそこから続く超高速S字カーブのラディオン。
今回の事故はそのラディオンの先のケメルストレートで起こりました。
ストレートでの死亡事故というのは、状況を見ていないと全く理由がわからないと思いますが、実はその事故直前にすでにラディオンでコースアウト、クラッシュが発生していました。
雨の中、フォーミュラマシンが走行することで路面の水が空中に巻き上げられて濃霧のようなウォータースクリーンが発生して、視界はゼロ。
その中でクラッシュ発生直後にレースを中断する合図が出されたのか出されなかったのか、レースはそのまま進行されました。
そして事故車両を避けようと今回死亡したドライバーもクラッシュ。
この時点ではまだ彼は怪我も無かったと思われますが、不幸なことにストレートのど真ん中を塞ぐ形で真横に停止してしまいます。
その止まった車両の、実にドライバーが座るその場所に向かって、後続車両が減速すること無く衝突してしまったのです。
側突事故、いわゆるTボーンクラッシュといわれるものです。
このレースは、運営・主催者側の多くのミスが若いドライバーの死という帰結に集約されていきました。
- そもそも雨の中で一時中断していたレースを再開した。
- クラッシュ発生後、即時のレース中断が指示されたか疑わしい
- 仮に中断指示があったとして、しかしドライバーには視界不良でその合図が見えない
- つまりレースをしてはいけない状況でレースが行われた
- さらに、オー・ルージュは「プロドライバーへの登竜門」というドライバー自身が恐怖心を塗りつぶさなければならないほどの強迫観念に近い「理由付け」がされてしまっている
- このフォーミュラマシンの側突安全性が低いのは、もしかするとこのレースのプライスキャップによるコストカットが原因か
自動車レースとは、モーター「スポーツ」と言いながら、その内実はエベレスト登頂とか南極大陸横断とかそういった「冒険」のような「挑戦」です。
危険です。
しかし、危険であるがゆえに冒険はたくさんの準備をして、その危険を最小限に抑える努力をしています。
エベレスト登頂チャレンジでも、天候やチャレンジャーの体調、装備の不具合などによって、「勇気ある撤退」をするもの。
プロこそチャレンジを諦めることができる。
このレース死亡事故は、たくさんのそういった撤退地点が用意されていたにも関わらずに突き進んでいってしまった「人災」なのではないかと思っています。
もちろん、サーキット運営もレース主催者も車両製作メーカーも参加レーシングチームも個別それぞれプロフェッショナルに仕事をしていたはずですが、「チャレンジする若いアマチュアドライバーたちを止める」という重大なプロフェッショナルの判断ができなかった。
若者を死なせてしまった、のと同時に、同じく衝突してしまったこちらもまた若者に殺させてしまった。
何かと「勝たなければ負け組」という価値観で世間を評価する風潮がありますが、死者の出ない競技・スポーツなどとは違い、人生とは判断ミスで死亡してしまう「冒険」です。
勝ち組、負け組と分断するような人は人として何かが欠けていると思わざるを得ません。
=============================
株式会社高木
横浜市神奈川区平川町22-5
TEL045(481)3725 FAX045(481)3625
本社HP:https://www.kk-takagi.co.jp
建築板金資材見積り・制作特設サイト:https://kk-takagi.co.jp/estimate/
金属外装工事Feat.:https://feat.kk-takagi.co.jp
=============================