サザエさん うちあけ話

みなさま、こんにちは。北川です。

秋の長雨ですね

ことしもあと90日余り、引き続き尽力します。

どうかコロナも戦争も下火になりますように。

サザエさん、といえばギネス記録の長寿アニメ番組ですが、家電や電話など作画が現代の製品にアップデートされているそうです。いろんな様式美は現代の子どもにもウケているみたいですね

まんがの作者・長谷川町子さんはとうに故人でありますが、まだ存命のころいくつかの随筆的まんがを遺しています。そのひとつが「サザエさん　うちあけ話」で、子どものころから4コマ漫画に親しんでいた私にとり作者の人となりが存分に伝わる読み物として、実家に寄るたび愉しみに読み返しています。

本書の内容は、まず漫画家になるまでの生い立ち。なってからの交遊録、仕事の苦吟の様子。母親と二人の姉妹との私生活。それと多数の外国旅行記など。面白いまんがを毎日こさえていた人なので、なにがネタになる、ならないかの選球眼は厳しくどれも端的に面白く描かれています。

いまも朝日新聞社から文庫版が出ているそうなので、お時間ある方はぜひご一読をおすすめします。昭和から生きている人々にはひろく共感を生む内容だとおもいます。☟書影です

ご存じのかたも多いとおもいますが、長谷川町子さんは3姉妹の真ん中で、お姉さんとお母さんがキャリア初期に町子さんのまんがを出版する「姉妹社」という小さな出版社を立ち上げ、有名漫画家になってからもお姉さんがマネジメントを行い、町子さんが一族の立役者でした。

家族との生活、協力があってこそ町子さんの仕事が成立していたといえます。

なにしろ昔はすくなかった女性の漫画家、生涯未婚で仕事ひとすじ、人見知りであまり私生活を明かさなかったせいもあり、前述の「うちあけ話」はいわば自伝となる貴重な史料だとおもいます。

昔のベストセラー量産作家の印税たるや、世田谷区に次々土地家屋を増やし、のちに蒐集した美術品を美術館として公開するくらいに大資産家となったそうです。箱根に別荘を保有するも放火で全焼してしまったとか。

そんな町子さんが亡くなった際、二人の姉妹に相続がなされるわけですが、妹さんはある事情から資産継承を放棄しておられ、現金証券不動産等いっさいを受け取りませんでした。ところが世田谷税務署は妹さんの相続放棄の額を知るだけに、さんざん調べつくした挙句わざわざ家まで訪ねてきて、数億を受け取らなかった訳を教えてくれませんか。と述べたそうです。信じられない事実なのでご当人からぜひお聞かせ願いたいと丁寧に尋ねたとか。課税対象は事実存在しないものの、こんな不可解なことが世の中にあるのかと。

私人のプライベートにまで立ち入るたいへん失礼な逸話ですが、平成初期でも骨肉の紛糾は身内以外の人間にまったく理解できなかったようです。

数億円を袖にしても自身50代以降の自由を守りたかった、家族の干渉を遠慮したかった強い意志までは赤の他人に想像つくはずもありません。女性のみの一族でビジネス展開し、資産管理も数名だけしか関与しない、独断専横・明治生まれのお母さんに育てられた3姉妹間の力関係は推して知るべしです。

一見仲睦まじい有名人家族にも長く続く生きづらさがあったようですね、後になって明かされた秘話です。

町子さんは面白い漫画を沢山世に残し、美術館も遺して亡くなられましたが、忘れ形見といえる姪の長谷川たかこさんというパリ在住日本語教師・エッセイストがいらっしゃるそうです。

ワカメちゃんの実在モデルともいわれるそうで、系譜に偉人との生活を後世に語り継げるひとが存命であるかぎり、朝日新聞社が評伝、回顧録を企画してくれたらとおもっています。個人的には白洲次郎さんくらいに昭和の偉人のひとりとすら。世間に姿を見せないのに、時事ネタやあるある、風刺で世の中をクスリと笑わせる漫画を長年生み出した天賦の才が惜しまれます。当時の世の中への影響力でいいますと。

いまでは信じられないことですが、昔は入院するひとへ病床でよんでくださいとサザエさん単行本を渡す人は多かったのです。昭和後期のおはなしです。

以上、思い出深い名著にまつわるお話でした。

毎々拙文ご精読を有難うございます。