みなさま、こんにちは。北川です。
先週風邪を引いてしまい家で週末寝ていますと、普段の寝ている時間が短いということに気づきました。
体が弱っていると休息なしには回復しないわけですが、日々質の良い睡眠はだいじですね。気をつけます。
「マルサの女」
故伊丹十三さんが映画監督をはじめてからの3作目でありますが、何をいまさらひさしぶりに見返しまして、よくできた映画だったなあと改めて感心した話をします。
伊丹十三さんとは元々海外映画にも出演した美男役者であり、TVCF演出、イラスト製作、洒脱な随筆と独特な異才多能ぶりを世に披露してきた人物でした。お父さんも映画製作者だったのですが、自身で映画監督をはじめたのは51歳で、いままでの経験が総合的に生かせることにきづいたそうです。デビュー作のお葬式で大絶賛、奇妙な次作タンポポを経て、3作目のマルサは時のバブル景気を背景に世の中をアッと言わせた力作だったとおもいます。
以下ざっと映画のあらましを。
マルサ=国税局査察部の俗称 各税務署単位で追いきれない複合的組織的な事業者・個人の悪質脱税を捜査しては追徴課税にまでもちこむタスクフォースです。
この映画ではあるホテル経営者がいかに所得を隠して申告しているのかその手法の解明、(当時の都市銀行も公に認めていた)あまたの隠し口座に分散させた余剰資金を査察部が証拠を集め特定、知恵比べの結果、脱税立件にまで持ち込むというおはなしです。現代では隠し財産の多くはデジタル資産でありあらゆる証拠もデジタルで押さえられるわけですが、あくまで80年代当時の時代考証としてもプロットがよくできています。
伊丹映画によく起用されていた役者、大滝秀治さん、山崎努さん、大地康雄さんも実にいいのですが、この映画の殊勲賞は、なんといってもまだ大御所になるまえの津川雅彦さんの名演です。この映画を繰り返し見る理由は、宮本信子さんの颯爽たる熱演もさることながら、津川さんの捜査後半における3つのシーンです。
35年前の津川さん☟
1 証拠メモをみせてなお捜査対象者の隠し口座を認めない銀行支店長へド迫力の啖呵
2 隠し金庫の鍵を持って美容院に行った被疑者の愛人から鍵を手に入れるまでのシーケンス
3 捜査対象者の自宅で(現金、印鑑、裏帳簿の)隠し部屋を発見するまでの絶妙な尋問
こうしてみると、納税を逃れることは無理だとか、脱税は極悪非道だとかが映画表現の意図のようにおもえるかもしれませんが、伊丹さんは「知恵比べ」として面白おかしく表現していたとおもいます。そもそも伊丹さんとは権力に皮肉を言うタイプの人物なのです。脚本も脱税する悪役は狡猾で頭がいい設定なので、査察部も内偵からして大人数でとてつもない苦労を捜査で重ねます。根競べと知恵比べのストーリー。
そんなコンゲームにとうとう負けを認めざるを得ない捜査対象者は、証拠を掴まれた以外にも降参だよと隠し資産を自供する結末。そんな刑事事件でいう完オチの手前、前述のシーン3・津川さんから山崎さんへの尋問はとても洒落ています。
「権藤さん(山崎さんの劇中役名)、あなたは優れた経営者でいらっしゃる。とても商才があって人も羨むくらいにお金を稼いでいらっしゃる。ぼくは人並外れた才覚をとっても尊敬してるんですよ。ただね一点だけ、尊敬できないところがある。それはね、所得を正確に申告しておられないのではないか、という疑いなんですよ、、、」
取り調べのよくあるアイスブレークの前に、津川さんは宮本さん(主人公である板倉亮子なる部下の役)にこう囁きます。
「いいかい。ぼくが権藤と話してる間、権藤の目の動きをみてろよ。焦ってきて目線がちらちら向く先をよーくみててね」
証拠探しである家宅捜索の結末は途中諦めかけた途端、、、アッと驚くどんでん返しがあるのですが、それは見てのお楽しみです。何度見ても手に汗握る心理戦の名演技
家探しでも証拠が出てこず、会話からも焦りの素振りがみえず、余裕綽綽の山崎さんから「え、、、なんだっけ。なにが訊きたいんだっけ!?」と恍けて返されると深い嘆息とともに「・・・いや、、もういいよ。。」と意気消沈するところからが見どころです。じつに巧みな演出です、舌を巻きます。
まだ津川さんが先輩も多く共演するなかでみせた、軽妙で交渉が巧みな中間管理職役でのイケメンぶり。公務員的スーツも相まって太陽にほえろの山さんばりに渋すぎます。人一倍仕事熱心で表情豊かに喋りまくる傑物。社会人になって以来そんな人物を何人か見てきましたが、優秀な昭和のサラリーマン「仕事への熱意」の表現がリアルに演出されてるなあと何回みても感心しています。御本人もモテ役以外にサラリーマンの芝居はほぼ初だったとか。
この役回りで心憎いのは正義を貫くというよりも。言いたくない隠したいのはわかるよー、だけどさ、、そりゃいかんだろう?そうおもわない?これだけ黙秘がんばったのはエライ、ぼくにはできない!だけどねもう潮時だよ、楽になろうよ。と褒めて持ち上げてあなたの気持ちはよーくわかる。だけどもうバレちゃってるんだよね、、とやさしく懐柔する心憎いところですね。
公務員である査察部職員たちが、目的のため懸命に働き捜査対象者からつぎつぎに証拠をあげていくアドレナリン漲る様子は、伊丹さんの入念な取材と巧みな演出の賜物でしょう。リアルな生活の断片をきりとって提示する60-70年代邦画のマナーを、警察以外の公務員の仕事ぶりで表現したのは斬新で当時話題になったのかなとおもいます。
もうひとつ。納税・税務署がとかく世間で憎まれ役なのを、査察にフォーカスし東京地検特捜部なみにスポットをあてたうえ、ユーモラスに仕立て上げたのがインパクト大です。伊丹さんならではの妙味
公開当時話題をさらった邦画の名作。ツタヤDISCASでレンタルか、ブルーレイをアマゾンで入手してご覧になれます。未見の方はぜひともどうぞ。
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