みなさま、こんにちは。北川です。
如月さむいですね、、、日暮れもはやい。
よいこは早く帰りましょう。
本日の温故知新、手塚治虫著「アドルフに告ぐ」文芸春秋刊 漫画のご紹介です。
カムイ伝、影丸武芸帖にならぶわたしの愛読書で完結までなんとハードカバー4巻もあります。そのむかし学生時代にまだ手塚治虫氏は存命でした。晩年に週刊文春に連載された大河ものを単行本化する際、大幅加筆修正に時間を費やし満を持して発売された、ブラックジャック 火の鳥に次ぐ最晩年のヒット作です。
以下物語のサマリー
・昭和初期~太平洋戦争~敗戦~戦後20年経た主人公の死までの大河ドラマ
・ヒトラーと二人のドイツ人とユダヤ人、3人のアドルフという名の男性主要人物
・日本とドイツの戦時中、市井の人々と軍人たちが毎日なにを行い、なにを感じていたのかの描写
・アドルフヒトラーの出生証明書という、彼の人生における最大の矛盾をフィクションのモチーフに
詳述はいたしません。ぜひおよみになってみてください。この漫画の優れたところ、手塚治虫さんならではの見どころを以下述べたいとおもいます。おおきく3点あります。
1 戦争をめぐる人々の熱狂(全体主義)と少数派の衝突の描写
2 戦争中の女性たちが熱望したものとは(手塚治虫さんならではのアイデア)
3 戦争と個人それぞれの正義について、いくつかの考え
以下ブレイクダウン
第二次大陸間戦争で日本とドイツが長期戦無理を承知で突き進み、無惨に数年後敗退したことは歴史上だれもが知る事実です。
軍人たちは根性でなんとかなる、軍備や強兵も先行領土拡大した先で調達を夢想したようですが、敵の前に兵站の脆弱さはどうにもなりませんでした。主たる敵は空襲で続々やってこれる爆撃機と燃料、焼夷弾をやまほど保有しているのに、竹やりで本土決戦をやりぬけと沖縄を見捨てた時点でいよいよ病膏肓。原子爆弾でとどめを刺されたというわけです。神風が吹くだとか根拠のない他責を堂々と新聞に書き始めた時点で、まともな国民は黙って終戦を待つしかなかった様子はこの漫画でつぶさに表現されています。
日本ではことコミュニズム信奉者を目の敵にして、戦前戦中は皆殺しにちかい虐待を権力がつづけていた事実があります。それでも命を懸けて戦争をはやく終わらせようとした国内の共産主義者と、物語後半登場する「リヒャルト・ゾルゲ」なるドイツ籍大物スパイが協力し、ソ連による日本敗戦への圧力に一役買っていたことは世界中のコミンテルン歴史のなかでも特筆すべき事象におもいます。結果としてソ連、アメリカの対日戦線で日本を劣勢にどんどん追いやった情報戦の立役者であったわけですから。敗戦にいたる途中で検挙され獄死はしたもののそれまでの貢献は図りしえない。
戦争(国家)を主導する軍部は意見を異にする少数派をつねに弾圧します。それは第二次大戦からおよそ100年経過したいまでも他国で証明されています。それでも祖国の将来を案じる真っ当な人たちは、屈することなく表立ってわからぬよう、国の行く末を正そうと言動を続けるのも古今東西かわりありません。そんな市井の人々の真摯な生き様がこの漫画には複数の人物のすがたを借りて表現されています。
現在では自衛隊しかり、女性も軍属になることが世界中で可能ですが、80年まえ日本で徴兵は男性のみでした。女性は沖縄の一部でしか戦闘参加していません。では、徴兵で配偶者をもっていかれた女性、生みの親、もしくは、戦争に起因する理由で家族と離れた女性たちは、自らが空爆で死ぬことはあっても、ひたすら家族や配偶者の生存帰国を祈るしかありません。太平洋戦争の中期末期、戦線敗退がつづき日本では徴兵が大学生まで拡大されました。これは出兵したら生きて戻れない確率がきわめて高い、戦闘中でなくとも兵站の補給が乏しく、戦線でそのまま病死餓死した者も多かったため、とにかく南方激戦地に兵力を注ぎ込まねばならなかった事情によります。
男性人口が一時的にどんどん減少したとはおそろしい事実ですが、島国から派兵される男性を送り出した、帰りを待つ女性にはなんのケアもないわけです。もちろん1950年以前の戦争でどこの国であろうとメンタルケア、PTSDの概念がそうはなかったはずですが、戦争で自分や家族の意志と無関係に命を失う男性とちかしい女性にとっては、どうにも阻止できない最愛の人にもう会えないことを意味します。
物語で主役なみの狂言回しを担う 峠由季恵さんも、戦争によって運命をおおきく翻弄されます。利発で聡明な女性のいきいきした姿は手塚漫画のおおきな特徴で、この作品でも、由季恵さん、境三重子さんという息子、恋人を戦争により失う二人の女性が、失った愛に号泣するところが描かれます。手塚治虫さんは史実にもとづく現代ストーリーを描くことがすくなかったわけですが、自身戦中も日本にいて学生であったがゆえ、国内の女性たちがなにを日常かんがえていたのかは想像つく事象だったのかとおもいます。いささか純粋すぎる描写ではありますが、手塚さんらしい、いにしえの女性らしさに満ち溢れる絵心です。
物語の最期、少年時代は親友であったユダヤ人とナチ残党が、決闘をしてユダヤ人が生き残ります。二人のアドルフが、戦争によっておおきく人生をかえるいくつもの運命に巡り合わせたすえ、お互いの正義を全うします。戦争に参加する(アドルフ・カミルは、パレスチナ戦争から戦闘参加)経緯はそれぞれ違うものの、少年時代に神戸で親しかった二人は、それぞれが正義と信じる道をすすみ、若くしてカウフマンはカミルの父を射殺します。その事実の吐露が最後の決闘で生前最後の二人の会話となるのですが、二人の価値感や考えには当然相いれない前提があります。
戦争とは異文化(民族)の浸食、冒涜、膠着、紛糾もしくは、利権・領土の拡大を目論む強奪からはじまることがおおい。二人の悶着も戦争の口実をユダヤ人迫害に求めたナチの民族主義によるもの。第二次大戦後のパレスチナ紛争でも、イスラエル建国で民族安住の地を夢見たアドルフ・カミルがそうはいかず、こんどはアラブ人と正義をめぐって戦いをつづける物語展開になります。
かと思えば、本田芳男さん(作中 本田大佐ご子息)が反戦に傾倒するようになった理由、親族のコミュニスト、満州での中国人差別を目の当たりにして、徐々に高級将校家族の立場を利用してスパイ網の末端を担います。戦争に加担するのとおなじくらい、反戦活動(終戦をはやめる策略)にも、祖国の戦争が真っ当とはおもえないゆえ命を懸けていたと読み取れます。
戦争反対や軍部批判がいかに自分の命を危険にさらすかはだれもが知りうる事実ですが、身の危険をおそれず信念をつらぬき生き抜いた小城先生や峠草平さんの「戦争に加担したくない」強い意志もまた、戦時中の立派な考えであったなとおもうのです。実際に戦争が終わるまでどれほどその信念によって迫害にあったかもこの物語をよむとよくわかります。
戦争がひとたび起きると、市井の人々の思惑や考えも様変わりするものですが、手塚治虫さん自身も戦争当時国内にいて窮乏にあえいだ体験からも、戦争に参加させられた人々がみな幸せとは離れていく様を見て、強い意志をもたねばとの願いをこの物語にこめたようにおもいます。
とても長い長い大河ドラマ(漫画)ですが、日本も侵略戦争をしていた事実をよくよく知っておく意味でもご一読をおすすめします。

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